sensitivity

20140724-011102-4262217.jpg

この詩を知らずに
死んでしまうの

茨木のり子氏の「自分の感受性くらい」という有名な詩がある。自分の力のなさや技術の乏しさに手を動かすのが辛くなったとき、何食わぬ顔をして私の目の前を毅然と歩き、正しい思考へと導く詩である。物を造る人、音楽を紡ぐ人、体で表現する人、懸命に生きる全ての人への激励の詩だ。

全く同じ様に生きている人などいないのだから、自分の思う正しさは一つの正解だと思う。生きた何十年分かの間に触れた全ての物の結果が、自分の生み出すものなのだ。以下、その詩をのせる。


茨木のり子「自分の感受性くらい」

ぱさぱさに渇いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ