A Single Man

A Single Man

無くした一つは大きくても
すべてを無くした訳ではない

【ファッションデザイナーとして成功を収めたトム・フォードが、かねてより熱望していた映画監督として初メガホンを取った人間ドラマ。「ベルリン物語」などの著者クリストファー・イシャーウッドの小説を基に、亡き愛する者のもとへ旅立とうとする中年男性の最期の一日を感動的に描く。主人公の大学教授を演じるのは『マンマ・ミーア!』のコリン・ファース。彼のかつての恋人を、『ブラインドネス』のジュリアン・ムーアが演じる。絶望の底で孤独に苦しむ主人公が見つける、何げない幸福が胸に迫る。】




シングルマン。コリン・ファースは好きな俳優。多くを語る訳ではなく、悲しみや絶望がぴんっと張った空気の中に現れている。そして絵が美しい。手からこぼれ落ちていったものを愛おしみ、悲しみを口にはできない。その絶望の中で手を伸ばし求める生きるための理由。隣に住む幼い娘ジェニファーの残酷で魅力的な幼さもこの映画のポイントのひとつになっている。